年収1,000万円を超えて感じたこと

過去から現在に至る道程と旅行の話

人生初のアルバイト~冷凍食品加工工場~

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1992年 16歳 高校中退 将来不明。

高校1年生の夏休みが終わっても学校には行かず、そのまま辞める事になった。とはいえ、いつまでも遊んでるわけにも行かず、親の小言を避けるためにも何かアルバイトでもしなくてはならない。

求人情報

何か良い仕事はないかと新聞の求人欄を見てアルバイトを探していたある日、1つの求人が目に留まった。

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[夏季限定] 8~17時

冷凍食品加工工場でのお仕事

日給1万円

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これだ!

1日1万円も貰えるなら1か月まるまる働けば20万円以上のお金を稼ぐ事が出来るし、夏季限定なので稼ぐだけ稼いだらまた数か月は遊んで過ごせばいい。

そんな単純な考えから電話をかけた。

面接

"高校中退"と書かれた手書きの履歴書を持って工場で面接をすると、あっさりと合格した。「今日からでも働けるぞ」と言われたが、心の準備が出来ていなかったので翌日からにしてもらった。

仕事の内容と製品

アルバイトに行ってみると工場勤務の他、内職契約している人達の家をトラックで周って製品を回収する仕事もあると知った。製品はレストランなどで使われている、ステーキやハンバーグの隣を飾る人参だ。冷凍して袋詰めされたものを出荷していた。

仕事の流れ

仕事の流れは以下のような感じだ。

  • [工場仕事] 人参の積み込み
  • [外回り] 人参の配達
  • [外回り] 製品の回収
  • [工場仕事] 製品の計量
  • [工場仕事] 製品の冷凍

[工場仕事] 人参の積み込み

1日1万円の肉体労働という事もあり、朝は早く仕事はかなり大変だった。朝イチの仕事はトラックへの人参の積み込みだ。農家などで使われているビール瓶ケースのようなカゴ一杯に詰まった人参はケース1つあたり重さ20kgあり、胸ぐらいの高さにあるトラックの荷台までそれを持ち上げなくてはならなかった。積み込む程に高さが上がって最後の方は自分の頭くらいの高さになっていた。

積み込むケースの数は毎日80前後だったように思う。社員であるドライバーさん達は慣れた様子で一度にケースを2つ、人によっては3つを持ち上げていた。

[外回り] 人参の配達

積み込みが終わると、トラックの助手席に乗って内職契約をしている各家庭を周った。内職さんが必要とする数の人参の詰まったケースをトラックから降ろして玄関まで届けた。車を横付け出来る一軒家は簡単だが問題は団地。

車を横付け出来ずエレベーターの無い建物も多かった。何も持っていなくても階段を4階まで上がるのは大変だが、手には20kgの人参ケースを持っていた。一段、もう一段と必死に足を上げた。

こんなに大変な仕事だとは思っていなかったが、弱音は吐けなかった。ドライバーさん達はケースを2つ持って階段を上がっていた。

インターホンを鳴らすと内職さん(小さいお子さんがいて外に働きに出れない奥さんなど)が出てきて人参の入ったケースを玄関に置かせてもらった。

[外回り]製品の回収

代わりに前回置いていった、内職さんが製品に加工(皮を向いて一口大にカット)した人参とゴミ(人参の皮)を回収した。網のような袋にギッシリと詰められた人参は乾燥しないように水に漬けられていて、水から出すとポタポタと垂れてズボンを濡らした。元の人参よりは軽くなったが、それでも10~15kgはあったように思う。

[工場仕事]製品の計量

各家庭で回収した人参をトラックに積み込んで工場に戻ると、トラックから降ろしてそれぞれ重さを測った。重量に応じて内職さんに報酬が支払われるので、出来るだけ皮を薄く剥いたりして人参1本あたりから取れる製品の量が多い上手な内職さんはたくさん稼げる仕組みだ。器用で作業スピードの早い人は人参ケースの数も多かった。

[工場仕事] 製品の冷凍

計量の終わった製品は網から出されてベルトコンベアへ流され、適量ごとにトレイに入れたものをパレットに乗せてハンドリフトで冷凍室に運んだ。冷凍室に長時間居るわけではないので寒くて凍えるような事は無かった。ここまでが1日の流れだ。

身体の変化と慣れ

初日はまだ体が慣れていなかったので体全体が痛くて腕が上がらなくなり、喋る元気も無くなる程だった。翌朝起きると疲れは全く取れておらず仕事に行くのが億劫だった。実際に、一緒の時期にアルバイトに入った人の中には数日で辞めてしまう人もいた。

しかし人間の体は環境に適応していくもので、1週間、2週間と経つにつれてトラックの積み込みや階段を上がるのにも慣れて腕は日に日に太くなり筋肉が付いた。製品からポタポタと垂れる水で常にズボンが濡れていたせいか、なぜかスネ毛が無くなった。

働く日々

ドライバーさんと世間話しながら外回りをしていると、あっという間に時間が過ぎた。工場仕事は時間の流れが遅くて好きではなかった。

  • ベルトコンベアがピリピリするなと思ったら漏電していたり
  • バケツに入った液体から雑巾を取り出して掃除をしようと思ったら雑巾がボロボロになって溶けたり(かなり強力な業務用洗剤だったらしい。ゴム手袋をしていて助かった)
  • 周りを良く見ていなかったジジイが押す製品満載のハンドリフトに轢かれたり(『おい、ジジイ!』と絶叫した)

そんな日々が過ぎて最初の給料日が来た。最初の月は手渡しで18万くらいを受け取った。

嬉しかった。

夏の終わり

人参を積み込み、人参を運んで、人参を凍らせる毎日を送り、あっという間に2か月が過ぎた。夏の終わりと共にアルバイトの終わりも近づいていた。

ドライバーさん達とも仲良くなり、もうすっかり仕事にも慣れた。おまけに給料もいい。不思議なもので、そんなに長い期間は働きたくないと思っていたはずなのに、ずーっとここで働きたい気持ちに変わっていた。

『バイト期間の延長は出来ませんか?出来ればずっとここで働きたいんですけど』と工場長に聞いてみたが、残念ながら当初の予定通り2か月でアルバイトは終わってしまった。

2か月目は23万くらいを受け取ったが、その後10年以上の間、この時の月給を超える事が出来なかった。

とても充実した夏だった。