年収1,000万円を超えて感じたこと

過去から現在に至る道程と旅行の話

年収350万円の結婚~後編~

鍵

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2010年 33歳 正社員SE 年収350万円。

新卒社員が入社してきた。お節介な僕は彼ら彼女らの面倒を見る事にした。そして1人の女の子との交際が始まり結婚する事になった。

手書きのメモ

1ヵ月が過ぎ、僕はまた現場を離れる事になった。次は、とある銀行の案件に決まり、初日はPCセットアップだ。
銀行から与えられたメールアドレスを使うために最初のログインでパスワードを入力する必要があった。パスワードは現場の会社の人から"手書きのメモ"で渡された。
0(ゼロ)とO(オー)だったか、1(イチ)とl(エル)だったか覚えていないが、似通った文字に惑わされてパスワードが通らず、3回目のログイン失敗でロックがかかってしまった。

僕は上長などに依頼すればすぐにロックを解除してもらえるだろうと思っていたのだが、「この銀行はアカウント運用にうるさく、依頼してもロック解除に1年はかかる」と言われた。確認しなかった僕も悪いとは思うが、なぜそんな大事なパスワードを手書きのメモで渡して来たのか全く理解出来なかった。

こうして僕は現場に入って初日に1度もログインすることなくメールが使えなくなった。

地元へ

飛行機

彼女を実家に連れて行き、親や兄弟、友人達に紹介した。みんな暖かく迎えてくれた。しかし実は少し前から僕と彼女の間には些細なケンカが増えていた。

おそらく元々合わない性格だったのだと思う。一緒にいても考え方が違ったりして話が合わず、お互いに我慢していたような気がする。特殊な状況でなければ近づく事はなかった2人なのだ。

現場では

色々と悩んでいた僕は夜あまり寝れず、仕事中に居眠りをする事が増えた。会議中にも何度も居眠りをして現場の上司に咎められた。正直なところ、上司との相性も良くなかった。

何度も何度も文書を修正するように上司に言われ、『さっきはそんな指摘しなかったじゃないですか!何回直せばOKしてもらえるんですか?僕にはあなたが満足できるものを作れる自信がありません!』とキレた事もあった。

現場には午後どころか14時くらいに出勤するのが当たり前の人間がいた。
勤怠はものすごく悪いがプロパー社員のため契約を切られたりする事は無い。
年間の飲み代が100万円を超えるほど飲み歩いていると本人から聞いた。明け方まで飲んでいるから昼過ぎにしか出社できないのだ。僕の居眠りは問題視されたが、彼は叱られていなかった。プロパーだからだ。

なんなんだこの会社は。人の事よりも、まず自分の会社の人間を何とかしろ。

僕は毎日イライラしていた。

終わり

彼女が僕の部屋に泊まる回数が日に日に減っていき、ついに全く家に来なくなった。そしてある時、彼女が別れを切り出した。僕は納得する事が出来ず、話し合いたかったが、彼女は僕に愛想をつかして、電話やメールなど一切の連絡を拒否してしまった。

皮肉な事に、新卒者の中で一番に彼女がIT資格を取得したことは社内や現場でも話題となり、やる気を評価されて重要な仕事を任されるようになっていた。資格取得を手伝った僕は喜ぶべきなのだろうが、翼を与えた事によって僕の元から飛び立ってしまったようにも感じられて素直には祝福出来なかった。

久しぶりに会社で会った彼女は僕に笑顔を見せる事はなく、他人よりも下の扱いだった。

ゴミ

仲の良い同僚から、『彼女は既に新しい男と付き合っているらしい』と聞いた。別れてからまだ1ヵ月も経っていないのに、まさかそんな、、、と思ったが、僕の心は痛んだ。

そういえば僕と付き合う時も、前の彼氏と別れて3ヵ月だと言っていた。彼女にとっては衣替えのような感覚なのだろうか。

通達

現場で仕事中に電話が鳴った。自社の営業からで、現場との契約が打ち切りになり、僕は入って3か月で退場する事になった。

無理もない。メールが使えないから紙で印刷してもらったりして手間をかけさせている上に、仕事中に居眠りばかりしているのだ。おまけに現場が求めるスキルを僕は満たせていなかった。再びメールが使えるようになるまで1年待つよりも、新たにもっと優秀なエンジニアを入れた方が良いという判断だろう。

自社の営業は『今回、たまたま合わない現場だったけど気落ちせず次も頑張りましょう。』と励ましてくれた。1ヵ月に一度は現場まで足を運んでくれてランチを食べながら話もした。良い人だ。

だが、僕は会社を辞める事にした。

僕には何も残っていなかった。働く理由も無い。休みを取りたかった。

送別会

会社を辞める時に、仲良くしていた色々なグループの人達から何回か送別会をしてもらった。みんなの気持ちが嬉しかった。辞める理由は言えなかった。

新卒の男の子の1人とも飲む機会があった。彼も本命は食品メーカーだったのだが、仕方なくIT業界に入って来た人間だ。実は辞める事を検討していたらしいが、僕の方が先に退職する事になってしまった。

話を聞くとどうやら新卒の子達全員に彼女との関係はバレていたらしい。まぁそうだろうなと思ったが、どうも本人が色々と言いふらしているようだ。

唐突に男の子が僕に聞いた。

 

『(僕の名前)さんって、夜の方もスゴイって聞きましたけど本当ですか?』

 

空白

家のベッドから空を眺めていた。

心の中とは裏腹に、空はすごくいい天気だった。快晴だ。

生きていると辛い事ばかりで、楽しみや嬉しさは、すぐに怒りや悲しみに塗り替えられてしまう。

 
親や兄弟、友人達に結婚がダメになった事を言うのは辛かった。

『実は結婚がダメになって仕事もクビになった。オンナにも現場にも振られたよ。笑』

と冗談めかして伝えたが、聞いた方もリアクションに困ったと思う。


とにかく何もする気が起きなかった。


読み貯めていた本?
行きたかったところ?
やりたかったゲーム?


時間はたくさんあるが、それに何の意味がある?
ゲームをしたらどうなるんだ?
レベルが上がるのか?レベルが上がったら楽しいのか?
楽しかったらどうだって言うんだ。というか楽しいってなんだ??
どういう状態だ?

 

自問は続いた。


レンタル屋でDVDを手にしても

この映画は面白いのか?
面白いとどうだって言うんだ?何か起きるのか?
楽しいのか?俺はこの映画を見たいのか?
見ても見なくても何も変わらないんじゃないか?
変わるってなんだ?良い方か?悪い方か?

と、DVDを棚に戻して何も借りずに家に戻る事も多かった。

そして家に戻ると、DVDを借りて来なかった事を後悔し、再びレンタル屋に行きたくなるのだ。

 

僕は必要とされていなかった。
誰にも気にされていないし無価値だった。

 

中卒のニートが東京に来て30歳からIT業界に入った。

スーツを着て必死に働いている自分が好きだった。

これからもっともっと人生が楽しくなるはずだったのに

なぜこんな事になってしまったのか。

決断

ある時、決めた。
なるべく周りに迷惑をかけないように。
自分が苦しまないように。

色々な方法を考えた。
家族、友人、1人1人に手紙を書いた。

 

感謝。

案外幸せに生きる事が出来たこと。

それほど不満は無いこと。

でも疲れたから少し寝たいこと。

 

書いているうちに涙が止まらなくなった。

恐ろしい想像をしている自分に気付いて、とても怖くなった。

"このまま一人で部屋に居ては良くない"と考え、
思い切って地元に帰る事にした。

 

僕は本当に意気地無しで何も出来ないクソ野郎だ。