年収1,000万円を超えて感じたこと

過去から現在に至る道程と旅行の話

年収350万円の結婚~前編~

指輪

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2010年 33歳 正社員SE 年収350万円。

IT業界に勤めて2年。あまりにも安い給料から転職活動を開始。年収は80万円アップした。転職先は急激に人数を増やしているベンチャー企業。同僚も個性派が多く退屈しない毎日を送っていた。

社員旅行

秋に1泊2日の社員旅行があった。昼間に2時間程の全社員集会をして、夜は宴会だ。部署ごとの出し物に続き、翌年入ってくる予定の新卒社員の自己紹介があった。男性4名と女性3名が入ってくるらしい。ステージの上で新人たちが挨拶をしているが、僕はあまり興味は無く、適当に拍手をしていたように思う。

宴会がお開きになった後の時間はそれぞれ仲の良いもの同士、部屋で語り合うなどして思い思いの時間を過ごした。社会人になってもこのあたりは学生時代の修学旅行とそれほど変わらない。

男達が向かうのは

新卒の女の子達の部屋には男性陣が代わる代わる訪れて大盛況のようだった。僕らの業界は男性が9割以上だ。まぁ、仕方ないところだと思う。というか、そういう時はなぜか妻帯者の方が積極的だったりしないだろうか。独身者は案外、男同士で過ごす事を好んだり。そういうものなのか?積極的だからこそ結婚出来たということだろうか。

僕も女性を好むノーマルな男性だが、そういった場でガツガツ行くのは苦手なので、人の少ないところを探して飲んでいたように思う。なにしろ、高校すら出ていないので就活とか新卒一括採用とかそういうのは良く分からない。何だか眩し過ぎて近づいてはいけない人達のような気さえしていた。

そして、IT資格の試験を翌日に控えていた。2,3時間寝て翌日は朝早くにホテルを出た。人が多いのは苦手だ。試験は合格した。

現場に配属された2人

翌年4月、新卒の男の子の1人と女の子の1人が現場に入ってきた。僕はその時に風邪をひいていたのでマスクをしたままぶっきら棒に頭を下げた。興味を持たないようにしていた。迷惑な先輩だと思われたくないし、新人教育というのは大学を出ていて優しさと教養のある人間がするものであって、つまり、それは僕じゃない。

しかし僕はお節介な方だった。母の遺伝だ。

同性という事で話しかけやすかったので男の子の方には基礎的な事を色々と細かく教える事にした。女の子の方はあまり構わなかった。"放っておいても新卒の女の子は女好きなオヤジ共が世話を焼くだろう"と思っていたのだ。

そうこうしているうちに、現場の仕事が一段落して、僕は自社に戻る事になった。

自社にて

次の案件が見つかるまで自習をして数日を過ごした。自社にはまだ現場が決まっていない他の新卒の子達がいたが、何だか放置プレーのようにも見えた。印刷した紙とか最低限の情報だけ与えて”あとはネットで調べて頑張ってね”ってやつだ。放置プレーで人が成長するなら教師やトレーナーという職業は存在しないはずだろう。

IT業界のこういうところ、正直クソくらえだ。

特訓開始

オフィス

もう一度言うが、当時の僕はお節介焼きだった。なので彼らに色々と教えることにした。自社でヒマだったのも理由の一つ。彼らに教えたのは主にサボリ方(何事も効率良くやれ)だったかもしれない。

彼らは加減を知らず真面目すぎるのだ。『今日やった事を日報としてメールしろ』と言われれば完璧さを求めるあまり2時間もかけてメールを作成するし、『倉庫からDVDを探して来い』と言われれば見つかるまで何時間でも探し続けるような人達だ。依頼主は既に帰っているというのに。

身の程知らずがアドバイス

僕は彼らにこう言った。

『残業を前提にせず、18時で帰れるように1日のスケジュールを組もう。8時間の勤務時間の中で、日報に2時間もかけていたら6時間しか仕事が出来ない。だから日報は15分で書こう。DVDも何時間も探したりしなくていい。15分探して見つからないなら、それを報告してアドバイスを貰うなり、他の方法を検討しよう。』と。

なにしろIT業界は頑張り過ぎると長続きしない。適度に力を抜く事こそが長続きする秘訣だ。終電帰りを何か月も続けたあげく、精神や身体に以上をきたして休職・退職するよりも、そこそこの頑張りで細く長く続けた方がいい。

それにまだ入社したばかりだし、21時まで会社にいる必要なんてない。

彼らには色々な事を言ったが、"地方出身で中卒・元ニートの僕でさえも名前を知っているような有名大学を出ている彼らに偉そうに何かを言うなんて"と、ちょっとおかしな気もした。

一方、元の現場では

たまに話を聞く事があったが、元の現場の男の子の方は色々と仕事を与えられ、忙しく頑張っているようだった。頼もしい限りだ。しかし、女の子の方は予想に反してあまり仕事を与えてもらえず暇しているようだった。印刷などの簡単な仕事だけお願いされて、今イチやりがいが感じられないらしい。せっかく良い大学を出て入社直後のやる気のある時期に簡単な仕事ばかりでは本人もつまらないだろう。

同期入社の男の子はバリバリと前線で働いているのに自分だけ朝から夕方まで座って資料の整理などばかりで、たまに声をかけられると「xxxさん、印刷してくれる?」では会社を辞めたくなるかもしれない。

成長中の会社だけに、入ってくる人間も多かったが、辞めていく人間も多かった。特に新卒の人間は2年経たないうちに半分になると聞かされていた僕は、もっと彼らの声に耳を傾ければ分かる事もあるかもしれないと思っていた。

放置プレーはしない

ランチ

僕は新人全員のIT資格取得をサポートしたり、ランチを一緒に食べに行ったり(おごる余裕は無かったのでワリカンだったが)、時には土日に勉強会を開いたりしていた。

みんないい子達だ。単なる迷惑な先輩だと思われていたかもしれないが、放置だけは良くないと思った。数ある企業の中からせっかく、自分たちの会社を選んで入社してくれたのだ。

『会社を辞めるとしたら、どういう理由ですか?』というアンケートを書いてもらったことが会社にバレて怒られて事もあった。本音を聞き出して対策を立てれば退職者を減らせると思ったのに、なぜ怒られたのか不明だ。

気が付けば

僕は自社にいながら、元の現場にいる新人の女の子の事もメールで励ましたり相談に乗ったりしていた。良くないとは思っていたのだが、そうこうしているうちに彼女に好意を抱いてしまった。社内恋愛はダメだ。フラれると会社に居づらくなるし、10歳以上も年下の新卒の子に手を出すなんて、バレたら周りに何を言われるか分からないだろう。

そもそも、それが目的で近づいた訳じゃなくて、相談に乗ってあげていただけで、なんかこう、仕方ない結果なんだ。不可抗力なんだ。と自分に色々言い訳したが、つまりは僕も下心を必死に隠そうとしていたタダの男だったという事だろう。

とにかく、そろそろ関係を進展させたかった。

ある日、食事に誘い交際が始まった。

マジっすか

なんの偶然だろうか。数日後、僕は1ヵ月限定で元の現場に戻るように言われた。まさかIT業界で働いていて職場に交際相手がいる状況なんて想像した事がなかった。男性が限りなく10割に近い業界だ。現場には40人ほどの男性。女の子は1人だけだった。

正直なところ、ちょっと優越感はあったのだが職場では関係を完全に隠す事にして依然と変わらないぶっきらぼうな態度を続けた。もちろん2人の時は笑顔だ。

僕はターミナル駅近くに住んでいたため家の遠い彼女は僕の部屋に泊まる事も多かったが、周囲にバレないように時間差で出社したり、ランチの時にも時間差でオフィスを出て外で待ち合わせたりしていた。

大抵、僕が先に家に帰るので夕食は僕が作っていた。朝食係も僕だった。

不思議なルール

僕の会社には新卒者だけに適用されるという不思議なルールがあった。"新卒者が入社半年以内に特定のIT資格を取得すると翌年に年収が50万円アップする"というルールだ。単なる噂かもしれないが、やる気の出る話だと思った。

僕の年収は350万。

新卒者の年収は300万。

50万円アップされたら同じ金額になってしまう。中途入社の僕は、きっと来年に50万円も上がらないだろう。羨ましい話だ。出来れば彼ら全員に達成して欲しいと思った。

身内びいき

そして、僕はズルをした。つまり新卒者の中で一番に彼女にIT資格を取らせるため、休日もデートを我慢して勉強を教えた。交際が始まって1,2ヶ月の時期だ。彼女は不満そうだったが、おかげで試験には一発で合格した。有名な大学を出ている事もあって、元々僕よりもよっぽど勉強が得意だったのだろう。

幸せになろう

ある日、家で彼女と過ごしている時に僕はプロポーズをした。

彼女の答えはYESだった。とても嬉しかった。彼女はプロポーズされた事をSNSに投稿し、"おめでとう"というメッセージがたくさん来ていると教えてくれた。

収入的な不安はあった。僕は33歳だが年収は350万円。住んでいるのは東京だ。

おまけに見栄を張って交通の便の良いところに住んでいたため、手取りの50%にあたる家賃を払っていた。正直なところ、ボーナス月以外はマイナスだった。

大丈夫だ。2人で働けばなんとでもなる。未来は明るい。

 

ついに僕も結婚する事になった。

 

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