年収1,000万円を超えて感じたこと

過去から現在に至る道程と旅行の話

年収160万円の面接~後編~

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2007年 30歳 契約社員CS 年収160万円。

『未経験から資格を取ってIT業界に入ろう!』という広告を見て、僕は研修へ参加することを決めた。 

研修参加者たち

研修には色々な年齢層・背景を持つ人がいた。120人の合格者のうち、本気でIT業界へ入ることを目指していないような人間も30%くらいいたように思う。すぐに研修に来なくなった者もいたし、研修中に隠れてゲームに興じる者もいた。

逆にプログラムの授業で、ものの数分で課題を終えた者もいた。聞くところによるとIT経験者らしい。しかも研修の中で取得する予定の資格まで既に持っているのだ。未経験者を対象とした研修になぜ彼が参加しているのか理由は不明だったが、何か彼なりの事情があるのだろう。
(まさか数年後に自分が彼と同じことをやるとは思っていなかったが)

今こそ成果を

転職フェア

3か月に渡る研修もあっという間に終わり、初歩的なITの資格も取った。あとは30社ぐらいが集まる転職フェアで就職先を見つける事が出来れば大成功だ。

目星をつけていた企業は11社あった。1社あたり20分は話すため、合間に少し休憩を入れないと疲れてしまう。気力をふりしぼり次の企業のブースを目指す。
人気のある企業は行列だったりもするが、すぐに担当者と話せそうな空いている企業もチラホラある。

限られた時間でたくさん周りたいのだが、中には気が利かず一方的に40分も話す担当者もいて困った。しかも1対1ではなく、周りに6人ぐらいを座らせて喋り続けるため、ただの講演会のような感じだ。
途中で立ち上がるわけにも行かず仕方なく座っていたが、気付けば寝てしまっていた。目を開けたら喋り続ける担当者と目が合って気まずかった。

結局7社と話して履歴書を渡して面接に呼ばれたのは3つ。目星をつけていた11社の中での1番の本命の会社の面接に呼ばれたのは嬉しかった。

本命企業

1次選考ではSPIなどの試験と面接があった。どうやら自分はSPI試験は得意らしい。
嬉しい事に2次面接に呼ばれた。『これはひょっとして!?』と期待したのだが結局落ちた。

転職フェアの結果は全滅だった。噂話に聞いたところだと、自分が本命としていた会社には2名の採用が決まり、そのうち1人はIT経験者の彼だった。

楽観的な思いは打ち砕かれた。

空振りの日々

心配事

気持ちを切り替え、その後もネットで検索した色々な会社に応募しては書類選考の段階で落ちる日々が続いた。自分の失業保険の給付も終わり、お金も無くなってきたのでアルバイトを始めたが、それでは足りず生活費を母に援助してもらっていた。3か月が経ち、これはダメかもしれないなと思った。

もうコールセンターの仕事に戻るしかないかも、と考え始めた。

そしてそんなドン底の時にこそ誰かに支えてほしいものだが、心の不安というのは言葉や態度に現れるのだろう。付き合っていた人とうまくいかなくなりケンカが多くなった。少ないアルバイト代の中からクリスマスプレゼントを購入して彼女と過ごすことを楽しみにしていたがクリスマスの夜は連絡が取れず、朝になってやっと連絡が来た。他の男と朝まで過ごしたのだ。ショックのあまりアルバイトは辞めた。

多くを望まず、契約社員として現状を維持していれば良かったのかもしれない。上手くいくはずだと思いこんだ自分の考えが甘かったのか。30歳からIT業界に入るなど無謀だったのか。食欲も無く何も手につかず眠れなかった。

心が壊れてしまうと遊びも勉強も同じことらしい。楽しみと苦しみの違いが無くなる。正月の間も朝から晩までずっとIT資格の勉強をして過ごした。意味があるかどうかも関係無かった。

エジプト

エジプト

そんな折、研修時代に同じクラスだったがそれほど仲が良くなかった人から、『また転職フェアがあるらしいけど行きませんか?』と誘われた。僕が決まらず苦戦しているというのを噂で聞いたらしい。向こうも苦戦しているようだった。

誘われた転職フェアには地元の企業に加えて、東京の企業も数社ほど参加していた。

もはや地元への未練が無くなってきていた僕は、ある企業のブースで東京へ来れるかと聞かれ、『今からでも行けます。東京だけでなく、エジプトでもどこへでも行きます!』と言った。本心だった。今思うとただ逃げたかっただけかもしれないが、とにかく前に進みたかった。エジプトという言葉に深い意味は無い。

熱意が伝わったのか、興味を持たれただけかは分からないが翌日にもう一度面接をすることになって、次の日にあっさり入社が決まった。僕はIT業界で働けることになった。

東京への引越し費用などを心配したが、会社で負担してくれるらしい。物件も会社で探してくれるため敷金などはかからず、給与から家賃が天引きされるそうだ。つまり給与が支払われるまでは家賃を支払う必要もないということで、最初の大きな出費を抑えれるのはありがたかった。既に50万円以上を援助してくれている母に、これ以上お世話になるのは避けたかった。

余談

東京にあるこの会社は地方の転職フェアで未経験者を積極的に採用しているらしかった。給与が安くてボーナスも無いため東京で暮らしている人にとっては魅力的ではない会社かもしれないが、僕のように何とかしてIT業界で働きたいと思っていた人間にとっては、とてもありがたい存在だった。この会社が無ければ今でも地元で燻っていただろう。ただし、彼女との関係は続いていたのかもしれない。違う仕事もあったのかも。

 

僕は入社した直後にずっと勉強を続けていたIT資格の試験に合格した。その5か月後にまた違う資格を取得して『今年一番資格を取得した社員』ということで表彰され、資格手当として月の給与が2万円増えた。研修の時から数えると1年間で4つのIT資格を取得したことになるが、3か月おきに1つというのは、ほぼ1年中勉強しているに等しい。今の自分には出来ない芸当だ。

終わりと始まり

握手

結局、研修に参加した120人のうちIT業界に入る事が出来たのは3割くらいだろうか。IT企業の面接を受けずに他業種へ就職する者がいたことにも驚いたが、運良く業界に入れた人間でも働き方に馴染めずに他業種へ移ってしまったりして、業界に残っている人間はわずかだと聞いた。研修の卒業生で10年経った今でもIT業界で働いている人間は10人もいないだろう。

地方の行政が"地元のIT業界を盛り上げるため"に企画して費用を負担した研修だったが、東京や大阪などへの人材流出が多く地元への貢献が少なったかったせいか、毎年行われていた研修は4回目で打ち切りになったそうだ

 

幸運にも僕はギリギリのところでIT業界に入ることができた。ただただ、毎日必死だった。何か1つではなく、色々な事が結びついた結果だと思う。

 

  • 友人がIT業界で働いていた
  • 地下鉄で広告を目にした
  • SPIの勉強をした
  • 本命企業に落ちた
  • 裏切られた
  • 心が壊れていたのでIT資格の勉強をした
  • 転職フェアに誘われた
  • 熱意を伝えた

 

ある日、予期せぬところから救いの手は差し伸べられるのかもしれない。

 

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