2007年 30歳 契約社員CS 年収160万円。
当時はコールセンターで契約社員として働いていた。自分から電話営業をかける方のコールセンターはノルマがあって大変らしいが、僕が働いていたのは電話を受ける方だった。しかも夜間帯だったのでかかってくる電話が少ないわりに時給は良かった。
もうそろそろ
確かに時給は良かったが、人数を多めに採用してシフトに穴が開かないように一人あたりのシフト回数を少なくするという会社方針だったので、もっと稼ぎたくてもシフト回数を多く入れてもらえず稼げなかった。
車も持っていたし付き合っている人もいたのであまり貯金は出来なかったが、それなりに幸せに生活していた。しかし、もう30歳だ。契約社員では無く、正社員としてちゃんと働きたかった。
友人の話
中学生時代からの最も付き合いの長い友人が結婚することになり、友人代表の挨拶を頼まれた。彼は街で一番の高校を卒業すると地元をいち早く飛出し、親元を離れて大学へ進学。IT業界に就職して数回転職したのち、現在の会社に誘われて今に至る。
彼はいつも前へ進んでいた。僕にはそんな行動力は無かった。ずっと地元に残り、最終学歴が中卒の僕と良く今まで友人関係が続いていると思う。彼は人間的な器が大きいのだ。
彼の会社の求人を見ると面白いことが書いてあった。『首都圏並みの報酬を約束します』とある。彼は900万貰っていると言っていた。東京ではなく、地方で生活する29歳がだ。地方は家賃などが安い。東京での収入に換算すると、おそらく29歳で1,200万とか1,300万貰っているような感覚だろうか。
彼は結婚することになって、1年間にマンション・車・大型テレビ(当時の価値でおそらく50万以上)と3つの買い物をした。ITってそんなに儲かるの?と驚いた。
羨ましく思ったが、IT業界というのは彼のように頭が良くてプログラミングなどの知識を大学で学んでいて、日々の努力を厭わない人が働く業界だろうと思っていた。自分には全く縁の無い世界だ。
ただし、彼は確かに高収入だったが労働時間も普通では無かった。毎日終電は当たり前。いや、家に帰ってからも会社からの電話に出て自宅でノートPCで仕事をしていた。
彼があまりに忙しくていつも会うことが出来ないので無理やり午前0時過ぎに1時間だけの約束で遊びに押しかけたとき、30分も経たないうちに会社から電話がかかってきて、話が中断された。
これでは結婚する奥さんも大変だなと思った。IT業界で働くとはどういうことなのかを友人から学んだ。
広告
ある日、いつものコールセンター勤務の帰りに地下鉄に乗ると、こんな広告が貼ってあった。『未経験から資格を取ってIT業界に入ろう!』
期間は3か月。市から補助金が出るため研修は無料。参加できるのは120人で面接あり。研修は昼間に行われるので、朝コールセンターの仕事が終わって毎日遅刻して通い、寝ないで夜またコールセンターで働けば両立出来るかもしれないが、それは無理だろう。仕事を辞める必要があった。
さっそく、IT業界で働く友人に相談をした。中卒でプログラミングも分からず、30歳になろうという僕がIT業界に入れるだろうか?と。友人は『んー分からんけど、やってみれば?』というような素っ気ない返事だった。
幸い、契約社員として雇用保険を支払っていたので、支給開始タイミングは遅れるが失業保険の給付を受けることができる。それでなんとかやりくりする事にして、研修に通う覚悟を決めた。問題は面接に受かるかだ。
地道な努力
試験はSPIとか時事問題・基礎的な数学などの問題と面接があるらしかった。書店に行って関連する参考書などを購入して、家にいる間は勉強をした。夜にコールセンターで電話がかかって来なくて暇な時間はタイピングの練習をした。
ブラインドタッチに憧れていた。元々かな入力だった。キーに平仮名が書いてあるので何を押せばいいか分かりやすいし、かな入力の方がタイピングするキーが少ないため速いと思っていたからだ。
しかし、ローマ字入力の方が覚えるキーが少なくブラインドタッチには有利だということがわかった。ある日、テレビで見かけた"ドラマのセリフをリアルタイムでタイピング出来る少年"もローマ字入力だった。
Excelや2進数16進数など色々なことを勉強した。自作PCを使っていたのでCPU・メモリなどハードウェア的な分野は何となく分かった。
頑張った
試験はそこそこ出来たように思う。面接はたぶん『友人がIT業界で働いていて話を聞いているうちにIT業界に興味が湧いたんです。』みたいなことを言った気がする。
聞いた話だと400人の応募があったらしい。何とか研修に参加出来ることになった。
友人から受ける影響は大きい。